我が家へようこそ
さて、話は戻りまして。前泊した徳山駅周辺のホテルを朝一番で出発して、周南市の保健所に向かいました。前日までこの日を楽しみにしていた夫も、「ちゃんと選んであげられるか自信がない。。。」車の中で、不安そうに夫が一言呟きました。それはそうだと思います。私達個人が引き取れる命には限りがあります。私達にも生活がありますし、出来るものなら一匹でも多くの命を救ってあげたいです。命は平等なはずだと思うし。しかしながら、無理にたくさん引き取って生活が立ちいかなくなったなんて無責任なことはできませんから、悔しいですけど私達夫婦には1匹2匹が限界です。なので、たくさん収容されている子達の中から選ばなければなりません。夫が不安になるのもわかります。
窓口で受付を済ませて、前回同様保護犬の収容所に案内していただきました。収容所は、やっぱり獣臭さが鼻につき、床には彼方此方にウンチやオシッコが散らばり、ブラシで職員さんが磨き上げるも、全然間に合わないと行った感じでした。一匹で保護された子は、某の隅に顔をやりジッと体を強張らせている様子でした。群で保護された子達は、まるで積み重ねられた石ころのように身を寄せ合っていました。一通り保護されている子達を見せていただきました。どの子も怯えていたのですが、中でも群の中に体を埋め、抱き上げようと手をやる職員さんを、今にも噛み付いてやると言わんばかりに唸りながら必死に抵抗していた子の姿が印象的でした。
そんな中でもまだすんなり抱き上げられた子がポテトでした。まだ小さく職員さん曰く1ヶ月くらいで、ことの事態を把握できていないようでもあったのですが、職員さんに抱き上げられキョトンと私達を見つめる姿に可愛さを感じて、引き取ることを決めました。
そして、事前にこの子と決めて見せていただいたのがバジルでした。バジルは、一匹で房に保護されていて、恐怖心から房の隅に体を埋め壁の方に顔をやり目をつぶっていました。
「隅で体を埋めて壁に顔をやってる子は、怖さから噛み付いたりすることが多いんです。」
職員さんは、深呼吸して分厚い手袋をはめ直してポツリ。
「僕が行きましょうか?」
ブラシで床を磨いていた職員さんが、ブラシを置いてバジルのいる房の扉の鍵を開けて、バジルの背中にそっと手を起きました。
その手を前足の付け根までゆっくりゆっくり動かし、バジルが唸り声を上げる気配がないことを確認して、グッと持ち上げました。
バジルは、噛みつきも唸りもせず、ただただ悲しそうに細い目でどこか遠くを見ていました。「この子は、大人しいな。壁に体を埋めて顔を壁に向けてる子は、だいたい触ると怒るんだけどな。連れてってもらえたらいいな〜。」とバジルに優しく語りかけておられました。
「あんた、ぶっさいくやな〜。」
そう言われながらも、バジルはずっと遠くを見つめながら、ぜったい目を合わせようとしませんでした。挙げ句の果てに、それは今でも続いてはいるのですが、持ち上げられながらウンチをポタポタ。
「あーあー、何やってるの?」
職員さんは、しょうがないな〜と、バジルに語りかけました。バジルは、相変わらず悲しそうな目をしてどこか遠くを見つめていました。
「なあ、この子もいいかな?」
「自分が決めたならいいんじゃない?」
「すみません。この子もお願いします。」
こうして、悲しい目のバジルも引き取ることになりました。バジルを、ペットキャリーに入れると、保護犬を引き取るにあたり保健所と誓約書を交わして、収容所を後にしました。
帰り際に職員さんと、以前実家の遣いで以前周南市の保健所でワンちゃんを引き取ったこと、そして今も元気に実家で暮らしていることを伝えました。
「それなら、良かったです!元気に暮らしてるんですね。幸せになってくれたのなら、良かったです!」と、おっしゃっておられました。
また、以前は日本での犬猫の殺処分率ワースト3という不名誉な座についていたみたいですけど、今では保護犬や保護猫を助けてくださる団体様や個人様のおかげもあり、今ではワースト3という不名誉な座を見事手放すことができるようになったと伺いました。それは、本当に良かったなと思います。
今回引き取ることになった二匹とも、野犬だったそうで、その野犬もその親達、はたまたその親達は、誰かに飼われていて捨てられた子だったりするわけで、飼い主の無計画や無責任が発端だったりするわけです。正直許される事ではないと思うし、少しでもこんなことが無くなればいいのにと思います。
私達夫婦は、子供はまずできませんので、私達の家族として少しでも満足できる生活をさせてあげられたらと思います。
周南市の保健所が入る総合庁舎
うちに来た翌日のバジル。相変わらずゲージの隅に顔をやり体を埋めています。
マイペースなポテトは、バジルの背中に顎をのせて一日中ベッタリ。